コンサル任せにしない、現場視点で進めるシステム検討という考え方

本記事では、基幹システムや業務システムの刷新・入れ替えといったシステム検討を進める中で、「コンサルタントを活用しているものの、思ったほど手応えを感じられない」「ユーザー部門が主体となって進めたほうが、かえってスムーズなのでは」と感じている担当者の方に向けて、判断の考え方と具体的な進め方を整理しています。コンサルタントに依頼する場合と、標準的なパッケージシステムやクラウド・SaaSの導入で十分対応できる場合の違いを整理しながら、ユーザー主導で進めることによる費用対効果や業務改善のポイントを、実務で使いやすい視点で解説します。
また、要件定義からベンダー選定、テスト・データ移行までの全体像を俯瞰できるチェックリストを示し、情報システム部門と現場部門が協力しながら、無理なくシステム検討を進めるためのヒントをまとめています。
1. システム検討で悩む担当者のよくある疑問
新しい基幹システムや販売管理システムの検討を任された担当者は、最初の段階で多くの不安や疑問を抱えます。特に、社外のコンサルタントに依頼すべきか、ユーザー部門と情報システム部門が中心となって自社主導で進めるべきかは、早い段階で判断が求められる重要なテーマです。この章では、担当者がつまずきやすい典型的な論点を整理し、後続の章で解説する「ユーザー主導のシステム検討」を理解しやすくするための土台を示します。
1.1 コンサルタントに頼るべきか自社で進めるべきかの迷い
最初に浮かぶのは、コンサルタントに費用を払ってでも入れるべきなのか、それとも社内メンバーだけで進めたほうがよいのかという迷いです。特に、これまで大規模なシステム刷新を経験していない企業では、「外部の専門家がいないと失敗するのでは」と不安を感じることが少なくありません。
一方で、コンサルタントを入れた場合と自社主導で進めた場合の違いが言語化できていないと、社内での稟議や投資判断も難しくなります。そこで、多くの担当者が検討する主なポイントを整理すると、次のようになります。
| 観点 | コンサルタントに依頼 | ユーザー主導で実施 |
|---|---|---|
| 初期の進めやすさ | プロジェクト計画や要件定義の型を提示してもらえるため、スタートはしやすい。 | 社内の体制づくりや手順の整理に時間がかかるが、自社の実情に合った進め方を構築しやすい。 |
| コスト構造 | 短期間で専門知識を調達できるが、コンサル費用が総予算の大きな割合を占めることがある。 | 外注費用は抑えやすいが、メンバーの工数確保や教育コストが必要になる。 |
| ノウハウの蓄積 | 成果物は残るものの、ノウハウが社外に留まりがち。 | 時間はかかるが、要件定義からベンダー選定までの知見が社内に残りやすい。 |
担当者は、これらの観点を踏まえながら、自社の体制・スキル・予算感を冷静に見極める必要があります。
1.2 情報システム部門と現場部門の温度差
システム検討を進めるうえで、情報システム部門と営業・経理などの現場部門との温度差は大きなボトルネックになりがちです。情報システム部門はセキュリティや運用保守、既存システムとの連携を重視する一方、現場部門は目の前の業務効率化や入力負荷の軽減を優先します。
例えば、情報システム部門は「統合データベース」「標準化」「クラウド移行」といったキーワードを重視するのに対し、現場部門は「入力画面のわかりやすさ」「承認フローの手間」「紙の帳票との整合性」といった具体的な使い勝手を重視します。このギャップを放置すると、次のような問題が起こりやすくなります。
・要件定義の場で、部門ごとに主張が平行線になり、検討が前に進まない。
・ベンダーへの説明内容が統一されず、提案がちぐはぐになる。
・導入後に「こんなはずではなかった」という不満が現場から噴出する。
こうした温度差を埋めるには、ユーザー部門が主語となって業務フローや課題を具体的に示し、情報システム部門が技術的な制約や運用面のリスクをわかりやすく翻訳する体制が重要になります。
1.3 経営層の期待と現場の実感のギャップ
システム検討では、経営層が描く「全社最適」と、現場が感じる「日々の業務のやりづらさ」の間にあるギャップも無視できません。経営層は、中期経営計画やDX戦略の一環として、基幹システムの刷新やクラウドERPの導入に大きな期待を寄せます。一方、現場から見ると、「また新しいシステムが増える」「入力項目が増えるだけではないか」と、負担増への懸念が先に立つことが少なくありません。
このギャップが大きいままプロジェクトをスタートさせると、システム検討の目的が共有されず、要件定義の優先順位付けもぶれてしまいます。担当者としては、経営層には投資対効果やリスク低減効果を整理して示しつつ、現場には具体的な業務改善イメージや移行時のサポート体制を丁寧に説明する役割が求められます。
つまり、システム検討の成否は、ツール選定だけでなく、「誰が主導するか」と「どのように社内の温度差を調整するか」に大きく左右されます。次章以降では、その前提として、コンサルタントをいれても有効ではないケースと、ユーザーが直接システム検討を実施する場合の考え方を詳しく見ていきます。
2. システム検討にコンサルタントをいれても有効ではないケース
すべてのシステム検討でコンサルタントが必須というわけではありません。状況によっては、ユーザー企業自らが主導した方がスピーディかつ費用対効果の高いプロジェクトになるケースも多くあります。まずは、どのような条件がそろうと「コンサルタントをいれても有効ではない」状態になりやすいのかを整理しておきます。
| ケース | コンサル不要になりやすい主な理由 |
|---|---|
| 標準パッケージ導入で足りる | 要件が単純で、業界標準機能だけで十分対応できるため、分析・設計コンサルの価値が出にくい |
| 業務プロセス改善が進んでいる | 既にBPRが完了しており、コンサルによる業務整理よりもシステム要件への落とし込みが中心になる |
| 社内に要件定義経験者がいる | RFP作成やベンダー選定を自前でこなせるため、外部コンサルの役割が限定的になる |
| 予算規模が小さい | コンサル費用が総予算に対して過大となり、ROIを悪化させてしまう |
2.1 課題が明確で標準的なパッケージ導入で足りる場合
販売管理や勤怠管理など、機能要件が明確で多くの企業が同じ課題を抱えている領域では、国産のパッケージシステムやクラウドサービスがよく整備されています。このような案件では、既に市場で成熟している標準機能を選び取ることが主眼となるため、複雑なコンサルティングよりも、製品比較と導入計画にリソースを割いた方が有効です。カスタマイズ前提ではなく「標準機能に業務を合わせる」方針が取れるのであれば、ユーザー部門による現場目線の検討で十分なケースが多くなります。
2.2 既に業務プロセス改善がかなり進んでいる場合
経理や営業事務などの現場で、すでに業務フローの整理、紙帳票の削減、二重入力の解消などが進んでいる組織では、コンサルタントが入り込める余地は相対的に小さくなります。「どう変えるか」を議論する段階は終わっており、「決めた業務プロセスをシステムにどう実装するか」を詰めるフェーズに入っているためです。この場合は、プロジェクトマネジメントとシステム要件定義をユーザー側でリードし、必要に応じてベンダーSEの提案を引き出す方が、スピードと整合性を担保しやすくなります。
2.3 社内に要件定義やRFP作成の経験者が在籍している場合
過去に基幹システム刷新や営業支援システム導入を経験した情報システム部門の担当者がいる場合、要件定義やRFP作成、ベンダー評価のノウハウが社内に蓄積されています。こうした人材がプロジェクトに参画できるのであれば、外部コンサルタントに依頼する内容と重複しやすく、結果としてアウトプットが二重投資になりがちです。社内リソースでカバーできないポイントだけにスポットでアドバイザリーを受けるなど、限定的な関わりに絞った方がトータルの費用対効果は高くなります。
2.4 予算規模が小さくコンサル費用の比率が高くなり過ぎる場合
小規模なSaaS導入や部門単位のシステム更新では、そもそものプロジェクト予算が限られています。その中でコンサルティングフィーが大きな割合を占めてしまうと、ライセンス費用やデータ移行、教育・トレーニングといった本来投資すべき領域に十分な予算を割けないリスクが生じます。年間予算や投資回収期間を踏まえ、コンサルティングを含めた総額でのROIを確認し、「コンサルなしでユーザー主導に切り替えた方が妥当か」を冷静に判断することが重要です。
3. ユーザーがシステム検討を直接実施したほうがいいメリット
3.1 業務とシステムの整合性が取りやすくなる利点
ユーザー部門が主体となってシステム検討を行うと、日々の業務プロセスや取引先とのやり取り、社内稟議の流れまで含めて、現場の実態に即した要件定義が可能になります。コンサルタント経由で伝言ゲームになる状況を避けられるため、画面レイアウトや帳票、ワークフローなど細部まで業務と整合した設計につなげやすくなります。
要件定義の場に実務担当者が直接参加することで、「本当に必要な機能」と「なくてもよい機能」を見極めやすくなり、過剰なカスタマイズや無駄なアドオン開発を抑制できる点も重要です。その結果、導入コストだけでなく、運用保守コストや改修コストの削減にも直結します。
また、情報システム部門と現場部門が同じテーブルで議論することで、業務標準化の議題も同時に進めやすくなります。システムを前提に業務を変えるのか、業務を前提にシステムを選ぶのかといったIT戦略上の判断も、自社の実情に合わせてバランスよく行えるようになります。
3.2 導入後の運用と改善サイクルを自走しやすい利点
システム検討の初期段階からユーザーが主体的に関わっていると、設計思想や制約条件を社内で深く理解できるため、導入後の運用設計やマニュアル整備、問合せ対応のルール作りまでスムーズに展開できます。いわゆる「ブラックボックス化」を避けられ、担当者交代があってもプロジェクトの目的と背景を引き継ぎやすくなります。
要件定義・テスト・受入のプロセスを自社で経験しておくことで、障害発生時や業務変更時にも原因を自ら仮説立てでき、ベンダーに丸投げしない運用改善サイクルを回せるようになる点は、長期的な運用安定において大きな強みです。小規模な機能改修であれば、社内の内製チームや情報システム部門だけで完結できるケースも増えていきます。
3.2.1 運用ルールとナレッジの定着
ユーザー主導で検討・導入したシステムは、現場の言葉で運用ルールや教育資料を整備できるため、現場定着のスピードが違います。操作マニュアル、FAQ、トラブルシューティング集などを自社で作成・更新できれば、ベンダーへの依存度を下げつつ、利用部門の満足度と生産性を高めることができます。
3.3 ベンダーと対等に交渉できるようになる利点
ユーザーがシステム検討を主体的に進めると、要件定義書やRFPの内容を自ら説明できるレベルで理解している状態となり、見積条件やスコープの妥当性を冷静に判断できるようになります。これにより、追加開発や仕様変更の交渉の場面でも、必要性と優先度を根拠を持って整理しやすくなります。
| 交渉項目 | コンサル依存の場合 | ユーザー主導の場合 |
|---|---|---|
| 見積内容の妥当性 | 工数根拠が不明瞭になりやすい | 要件との対応関係を自社で検証できる |
| スケジュール調整 | ベンダー主導の計画に流されがち | 業務カレンダーを前提に再交渉しやすい |
| リスクと責任分界 | 契約条項の理解が部分的になりがち | 受入条件と品質基準を自社で定義できる |
システムの前提条件や業務インパクトをユーザー自身が把握していることで、価格だけでなく品質・保守体制・将来拡張性を含めた総合的な価値でベンダーを評価し、対等な立場でパートナーシップを築ける点が、ユーザー主導の大きなメリットです。
3.4 社内にノウハウが蓄積し内製化が進みやすくなる利点
要件定義、WBS作成、ベンダー選定、受入テストといった一連のシステム検討プロセスをユーザー自ら経験すると、その手順や判断基準が「社内標準」として整理されていきます。テンプレートやチェックリスト、議事録のフォーマットを自社で整備しておけば、次回以降のプロジェクトの立ち上げスピードと品質が大きく向上します。
こうしたノウハウの蓄積は、将来的に一部機能の内製開発や、SaaSの選定・設定を自社だけで完結させるための基盤となり、DX推進やITガバナンス強化にもつながるため、中長期的な投資対効果(ROI)の観点でも非常に有効です。人事ローテーションや組織変更があっても、ドキュメントと教育を通じて知見を継承しやすくなります。
さらに、ユーザー主導で培ったプロジェクトマネジメントの経験は、基幹システムだけでなく、営業支援ツールや在庫管理システム、ワークフローシステムなど、他のIT導入案件にも横展開が可能です。結果として、外部コンサルタントに依存しない、自律的なIT企画・推進力を社内に育てることができます。
4. ユーザー主導で進めるシステム検討の全体ロードマップ
ユーザー主導でシステム検討を進める際は、場当たり的にツールを比較するのではなく、全体像を押さえたロードマップを描くことが重要です。特に、情報システム部門と現場部門、経営層の三者が同じ絵を共有できているかどうかが、プロジェクト成功の分かれ目です。
| フェーズ | 主な目的 | 代表的なアウトプット |
|---|---|---|
| 現状把握・課題抽出 | 今の業務とシステムの問題点を明確化 | 課題一覧、AsIs業務フロー、要件メモ |
| ToBe業務設計・要件整理 | あるべき業務プロセスとシステム要件の整理 | ToBe業務フロー、機能要件・非機能要件リスト |
| RFP作成・ベンダー候補選定 | 要求事項を文書化し、候補ベンダーを絞り込み | RFP、評価観点、候補リスト |
| 比較検討・最終選定~導入計画 | 最適な解と導入シナリオの確定 | ベンダー選定結果、導入スケジュール、体制案 |
4.1 現状把握と課題抽出のステップ
4.1.1 プロジェクト体制とゴールの明確化
最初に、現場部門のキーユーザー、情報システム部門、経営企画部門などからメンバーを選定し、プロジェクト憲章を作成します。ここで「何のためのシステム投資か」「どのKPIを改善したいのか」を定量的に言語化しておくことで、後工程のブレを防げます。
4.1.2 現場ヒアリングと業務フローの可視化
次に、営業、バックオフィス、生産管理など主要部門へのヒアリングを行い、既存システムやExcel、紙帳票も含めたAsIs業務フローを作成します。ここでは、処理頻度、処理時間、二重入力や属人作業の有無など、業務コストが見える粒度で整理することがポイントです。
4.1.3 課題の整理と優先順位付け
洗い出した課題を「影響度」と「緊急度」のマトリクスで分類し、システムで解決すべきものと業務改善で解決すべきものを切り分けます。そのうえで、上位の課題をシステム要件候補としてメモ化し、次フェーズの入力情報とします。
4.2 ToBe業務設計とシステム要件整理のステップ
4.2.1 あるべき業務プロセスの設計
AsIsで見つかったムダ・重複・リスクを減らすことを意識しながら、ToBe業務フローを検討します。ここでは、「標準業務に寄せる部分」と「自社固有の強みを活かす部分」を切り分け、パッケージシステムのFit&Gapを想定しやすい形に整えます。
4.2.2 機能要件・非機能要件の整理
ToBe業務フローに対応する入力画面、帳票、インターフェースなどの機能要件と、性能・可用性・セキュリティ・バックアップなどの非機能要件をリスト化します。ここで「必須」「できれば」「将来検討」の三段階で優先度を付けておくことが、後のベンダー比較で大きな助けになります。
4.2.3 概算投資規模とスケジュール感の整理
機能のボリューム感や周辺システムとの連携範囲から、おおよその投資レンジと導入期間を想定し、経営層との認識合わせを行います。この段階で、フェーズ分割導入やローコード開発の活用といった選択肢も検討します。
4.3 RFP作成とベンダー候補リストアップのステップ
4.3.1 RFPの構成と記載ルールの決定
プロジェクトの背景、スコープ、業務概要、システム要件、非機能要件、見積条件、提案フォーマットなどを含むRFPの構成を定めます。読み手であるベンダーが誤解しないよう、用語定義や前提条件を明記し、回答期限や質疑応答の方法もルール化します。
4.3.2 ベンダー候補のリストアップ
既存取引のあるSIerやクラウドベンダー、業種特化パッケージベンダーなどを洗い出し、実績規模、得意業界、サポート拠点などの観点で候補を絞り込みます。そのうえで、RFP送付先リストとして整理し、事前説明会の案内準備までを行います。
4.4 比較検討と最終選定から導入計画策定までのステップ
4.4.1 提案内容の評価とショートリストの作成
提出された提案書を、価格だけでなく、要件適合度、拡張性、運用保守体制、プロジェクトマネジメント力などの観点でスコアリングします。デモやプロトタイプ確認を行い、ショートリスト候補を2~3社に絞り込みます。
4.4.2 最終交渉とベンダー選定
ショートリスト各社と、契約条件、体制、スケジュール、カスタマイズ範囲を詰めていきます。このフェーズでは、ユーザー側で想定したリスクと対応策をぶつけ、合意できるかどうかを見極めることが重要です。
4.4.3 導入計画と体制の具体化
最後に、選定したベンダーと共同で、フェーズ別のWBS、テスト計画、データ移行計画、教育計画を含む導入ロードマップを作成します。こうして、ユーザー主導で合意した計画をもとに、本格的なシステム導入プロジェクトへと進めていきます。
5. システム検討チェックリストユーザー主導で進める時
ユーザー企業が主導してシステム検討を進める場合、コンサルタントに依存せずとも抜け漏れなく進行できるよう、具体的なチェックリストを用意しておくことが重要です。ここでは、ステークホルダー調整、要件定義書・RFPの品質確認、テスト計画・移行計画の観点から、実務でそのまま使える確認項目を整理します。
5.1 ステークホルダー調整と合意形成のチェック項目
情報システム部門だけでシステム検討を進めると、現場部門や経営層とのギャップが生じやすくなります。ユーザー主導で進めるからこそ、初期段階での合意形成とガバナンス設計を丁寧に行うことが不可欠です。
5.1.1 関係者と意思決定プロセスの整理
誰がプロジェクトオーナーで、誰が最終決裁者なのかを明確にすることは、コンサルタントをいれない場合ほど重要になります。以下の観点で洗い出しと整理を行います。
| No. | チェック項目 | 確認の観点 |
|---|---|---|
| 1 | 全ステークホルダーをリスト化しているか | 経営層、情報システム部門、現場部門、監査部門、親会社・関連会社などを網羅しているか |
| 2 | 役割と責任範囲(RACI)が定義されているか | 決定者、承認者、実務担当者、参照者がプロジェクト計画書に明記されているか |
| 3 | 意思決定プロセスが文書化されているか | どのレベルの判断をどの会議体で、どの頻度で行うかが合意されているか |
5.1.2 合意形成とコミュニケーション設計
ユーザーが直接システム検討を行う場合、説得材料の準備と情報共有のタイミングが鍵になります。「なぜこの要件が必要か」「なぜこのベンダー案を採用するのか」を説明できる資料を、事前に用意しておくことが求められます。
| No. | チェック項目 | 確認の観点 |
|---|---|---|
| 4 | 主要な論点と判断基準が共有されているか | 費用、業務効率、内部統制、セキュリティ、運用負荷などの評価軸を明示しているか |
| 5 | 定例会議と報告フォーマットが決まっているか | 進捗報告、リスク報告、課題管理のテンプレートを標準化しているか |
| 6 | 合意内容を記録・保管する仕組みがあるか | 会議体ごとに議事録を残し、決定事項と保留事項を明確に管理しているか |
5.2 要件定義書とRFPの品質を確認するチェック項目
コンサルタントをいれない場合でも、要件定義書とRFPの品質が高ければ、ベンダーとの認識齟齬を大きく減らすことができます。逆にここが曖昧だと、導入後のトラブルや追加費用の発生につながります。
5.2.1 業務要件・システム要件の網羅性
現状業務とToBe業務の差分を整理したうえで、業務要件、機能要件、非機能要件を分類して記載できているかを確認します。
| No. | チェック項目 | 確認の観点 |
|---|---|---|
| 1 | 業務フローとの対応関係が示されているか | 業務プロセス図と要件一覧を照合し、抜けている工程がないか |
| 2 | 非機能要件が定量的に記載されているか | 性能、可用性、バックアップ、セキュリティ、保守体制などが数値や条件で定義されているか |
| 3 | 他システム連携要件が整理されているか | インターフェース一覧、データ項目、連携タイミングが明確になっているか |
5.2.2 RFPとしての明確さと比較可能性
ユーザー主導でベンダー選定を行うには、どの提案を選んでも公平に比較できるだけの情報をRFP側で定義しておくことがポイントになります。
| No. | チェック項目 | 確認の観点 |
|---|---|---|
| 4 | 評価基準と配点がRFPに記載されているか | 価格、標準機能適合率、拡張性、サポート体制などの重み付けが示されているか |
| 5 | 提案書に記載してほしい項目が指定されているか | 体制、スケジュール、リスク、概算見積、ライセンス体系などのフォーマットが統一されているか |
| 6 | Fit&Gapの前提条件が明確か | 標準機能で対応すべき領域とアドオン開発を許容する領域を定義しているか |
5.3 テスト計画と移行計画の抜け漏れ防止チェック項目
ユーザーが直接プロジェクトをリードする場合、テストとデータ移行の計画が甘いと、本番稼働直前に大きな手戻りが発生します。テスト観点と移行手順を早い段階から具体化し、ベンダーと共有しておくことが成功の条件になります。
5.3.1 テスト計画の粒度と体制
単体テスト、結合テスト、総合テスト、ユーザー受入テストのそれぞれで、目的と責任分担を明確にします。
| No. | チェック項目 | 確認の観点 |
|---|---|---|
| 1 | テスト範囲とスケジュールが定義されているか | 重要業務・重要画面に優先順位を付け、クリティカルパスに合わせた計画になっているか |
| 2 | テストケース作成の責任者が決まっているか | 現場部門が主体となり、実運用を想定したシナリオテストを設計できているか |
| 3 | 不具合管理のルールが整備されているか | 障害票のフォーマット、優先度定義、対応期限のルールをベンダーと共有しているか |
5.3.2 データ移行と本番切替の計画
旧システムから新システムへの移行は、ユーザー主導で検討することで、実務に即した安全な手順を設計しやすくなります。特にマスタデータとトランザクションデータの扱いには注意が必要です。
| No. | チェック項目 | 確認の観点 |
|---|---|---|
| 4 | 移行対象データと移行元・移行先が定義されているか | マスタ、取引履歴、帳票、添付ファイルなどを種類ごとに整理しているか |
| 5 | 移行手順とリハーサル計画があるか | 本番移行前にテスト環境で複数回リハーサルを行う前提が盛り込まれているか |
| 6 | 切替後のバックアウト(元に戻す)手段が定義されているか | 移行失敗時にどの時点までロールバックできるか、事前に経営層の承認を得ているか |
6. システム検討でコンサルタントをいれても有効ではないと感じた後のアクション
システム検討でコンサルタントを活用してみたものの、「期待した成果が得られていない」「費用対効果が見合わない」と感じることは珍しくありません。そのときに重要なのは、感情的に契約を打ち切ることではなく、プロジェクトの目的達成を最優先に、契約と役割を冷静に見直し、社内で自走できる体制へソフトランディングさせることです。
6.1 契約見直しと役割再定義の進め方
6.1.1 見直しプロセスの具体的手順
まずは、現行のコンサルタント契約と成果物を棚卸しし、当初の想定と何がズレているのかを明確にします。ここでは、情報システム部門、現場部門、経営層の代表者を交え、「何ができているか」ではなく「ビジネス課題の解決にどこまで近づけたか」という観点で評価することが重要です。
次に、契約のどの範囲を継続し、どの範囲を打ち切るか、あるいは役割を変更するかを整理します。たとえば、要件定義やRFP作成はユーザー主導に切り替え、コンサルタントにはレビューや第三者評価のみを任せるなど、スコープを絞り込むパターンが有効です。
| ステップ | 目的 | ポイント |
|---|---|---|
| 現状評価 | 成果物とプロジェクト状況の把握 | 契約書・提案書・議事録をベースに事実で評価する |
| 課題の特定 | 期待と実績のギャップ整理 | 「誰の役割で生じたギャップか」を明確化する |
| 役割再設計 | ユーザーとコンサルの新しい役割分担を定義 | ユーザー主導で意思決定し、コンサルは補完的役割に限定する |
| 契約再交渉 | 費用・期間・成果物の再定義 | プロジェクト計画とガバナンス体制に反映させる |
6.1.2 役割再定義で押さえる観点
役割再定義では、RACIのような責任分担表を用いて、「決定権者」「作業担当」「レビュー担当」を明確にします。システム要件定義、ベンダー選定、テスト計画などのコア領域はユーザーが主体となり、コンサルタントはレビューと専門的な助言に集中させることで、コンサル費用を抑えつつ品質を担保できます。
6.2 社内メンバーの育成計画の立て方
コンサルタントへの依存度を下げるには、社内メンバーのスキル強化が不可欠です。特に、「業務プロセス設計」「要件定義書・RFP作成」「プロジェクトマネジメント」の3分野を重点的に育成テーマとして設定します。
育成計画では、研修だけでなく、実プロジェクトでのOJTと、ベンダーやコンサルタントからのナレッジ移転を計画的に行うことが効果的です。たとえば、コンサルタントが作成した成果物のレビュー会を社内勉強会として位置づけ、テンプレートやチェックリストを自社標準としてストックしていきます。
6.3 次回プロジェクトへの学びを残す仕組み
今回のシステム検討で得られた学びを次回プロジェクトに活かすためには、属人的な経験にとどめず、形式知として整理することが重要です。プロジェクト終了時には、情報システム部門だけでなく、現場部門と経営企画も参加する「振り返り会」を設け、うまくいった点・失敗した点・次回改善すべき点を、チェックリストや標準プロセスの形で残すようにします。
こうした振り返りを通じて、「ベンダーへの伝え方」「RFPの書き方」「テストと移行計画の注意点」などが社内ナレッジとして蓄積されれば、次のシステム検討ではユーザー主導でプロジェクトを設計できるようになります。最終的には、コンサルタントはスポットで補完する存在と位置づけ、日常的なシステム企画・要件整理は社内で完結できる体制を目指すことが、失敗しないシステム検討への近道となります。
7. まとめ
システム検討において「コンサルタントをいれても有効ではない」と感じる場面は、課題が比較的明確で標準的なパッケージ導入で対応できる場合や、すでに業務プロセス改善が一定レベルまで整理されている場合、社内に要件定義やRFP作成の経験者がいる場合などに多く見られます。このようなケースでは、外部コンサルタントに依存するよりも、ユーザー部門が主体となって検討を進めたほうが、コストと効果のバランスを取りやすくなります。
ユーザーが直接システム検討を実施する最大のメリットは、業務とシステムの整合性を取りやすい点にあります。現場を知る担当者が中心となって要件を整理することで、実態とかけ離れたシステムになるリスクを抑えられます。また、導入後の運用や改善サイクルを自走しやすくなり、ベンダーとも対等な立場で交渉できるようになるため、長期的な視点で見たときの投資対効果も高まりやすくなります。
さらに、ユーザー主導でシステム検討を進めることで、要件定義やRFP作成、ベンダー選定といったプロセスのノウハウが社内に蓄積されます。これにより、将来のシステム更改や周辺システムの追加検討を内製しやすくなり、外部依存度を下げながら自社に適したIT戦略を描きやすくなります。情報システム部門と現場部門、経営層の三者が共通認識を持てるようになる点も、ユーザー主導の大きな効果です。
一方で、ユーザー主導で進めるには、現状把握・課題抽出から、ToBe業務設計、システム要件整理、RFP作成、ベンダー比較・選定、導入計画策定までのロードマップを、抜け漏れなく踏むことが重要です。そのために、ステークホルダー調整や要件定義書・RFPの品質確認、テスト計画・移行計画のチェックリストを用意し、プロジェクト全体を見渡しながら進行管理する仕組みが欠かせません。
すでにコンサルタントを入れている場合でも、「思ったほど価値が出ていない」と感じたなら、契約内容と役割分担を見直し、社内メンバーの育成計画を明確にしたうえで、ユーザー主導への比重を高めていくことが有効です。プロジェクトで得られた学びを次回以降に活かすために、振り返りの記録やテンプレートを整備し、社内標準として残しておくことも重要です。
システム検討は、外部パートナーを上手に活用しながらも、最終的には自社の業務と責任をどのように設計するかが問われる取り組みです。「コンサルタントをいれても有効ではない」と感じたときこそ、ユーザーが主導権を取り戻し、自社にとって本当に必要なシステムと体制を見直す好機といえます。広告業の業務管理の困りごとは、サイネット株式会社へご相談ください。
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